米国のラスベガスと中国のマカオは、世界のカジノ産業を代表する二大都市です。

砂漠の真ん中で世界的なエンターテインメント都市へと成長したラスベガスと、東西の文化が交差する貿易港からアジアのカジノの中心地へと飛躍したマカオ。両都市は、カジノがどのように都市の運命と産業の地形を変えることができるかを示す象徴的な事例です。

 

最新の公式統計によると、ラスベガス市の人口は2025年7月1日時点で67万9817人、マカオの総人口は2026年6月末時点で68万6500人です。行政区域や人口算出基準は異なりますが、都市自体の人口規模は似ています。ラスベガスは周辺都市を含む広域都市圏に範囲を広げると、約241万人に達します。

 

彼らが引き寄せる観光需要は、居住人口をはるかに上回ります。2025年のラスベガス訪問客は約3850万人、マカオは約4007万人を記録しました。集計方式や観光圏域が異なるため単純な順位比較は困難ですが、両都市とも世界的な観光目的地として定着しました。

 

しかし、華やかなカジノと大型ホテルという外見の裏には、それぞれ異なる成長公式があります。両都市の違いを理解するための問いは、「どこがより華やかか」よりも「誰が、何のために訪れ、カジノ以外にも滞在する理由があるか」に近いものです。

 

◇ 砂漠の都市と貿易港、出発から違った

 

ラスベガスの成長を説明する際に欠かせない転換点は、1931年のネバダ州のカジノ合法化とフーバーダム建設です。労働者や訪問客の流入により宿泊・娯楽需要が高まり、その後カジノホテルと公演産業が結合することで観光都市の基盤が形成されました。

 

初期には組織犯罪資本の影もありましたが、企業資本と大型リゾート運営会社が中心となることで競争の範囲が広がりました。ゲーム場の規模だけでなく、客室、レストラン、公演、ショッピング、展示施設が顧客を引き寄せる手段となりました。

 

マカオの重要な転換点は、独占から競争へと移行した過程です。

 

1962年から続いたSTDM中心の体制は、2002年のカジノ市場開放を機に変わりました。マカオ政府の資料でも、カジノの歴史を伝統ゲーム中心の時期、STDM独占運営時期、2002年以降の複合リゾート時期に区分しています。

 

その後、グローバルなカジノ資本が参入し、コタイに大型複合リゾートが集積したことで都市の観光地形が変わりました。従来の「マカオ半島中心のカジノ観光」が、ホテル・ショッピング・公演を共に消費する「リゾート観光」へと拡張されたのです。

 

ラスベガスが長い時間をかけて訪問目的を蓄積してきたのに対し、マカオは市場開放と大規模投資を通じて変化の速度を速めました。

 

◇ ラスベガスの力は「訪問理由の多様性」

 

ラスベガスでは、カジノをしなくても旅行日程が埋まります。国際展示会や企業イベントに参加し、公演やスポーツ観戦を楽しみ、レストランやショッピング施設を利用できます。

 

こうした需要は、異なる時間帯や曜日に都市を動かします。コンベンションは平日の宿泊需要を作り、公演やスポーツは特定の日に観光客を集めます。カジノを利用しない同行者にも、旅行を楽しむ理由が生まれます。

 

この構造の意味は、観光需要が揺らぐときに明らかになります。

 

ラスベガス観光局によると、2025年の訪問客数は前年比7.5%減少しました。しかし、コンベンション参加者は約600万人で前年と同水準を維持しました。観光局は、コンベンション活動が観光産業を支える役割を果たしたと説明しています。

 

産業の多角化がすべての危機を防いでくれるわけではありません。ただ、訪問目的が複数あれば、特定の需要が減ったときに衝撃を分散させる余地が生まれます。

 

ラスベガスが示す競争力は、巨大なカジノ一箇所の興行を超え、都市全体の宿泊・外食・公演・イベントを連結する運営能力にあります。

 

◇ マカオの力は「集積と背後市場」

 

マカオは比較的狭い地域に大型カジノや高級ホテル、ショッピングモール、レストラン、公演施設が密集しています。観光客は複数のリゾートを比較しながら利用でき、事業者は顧客を確保するために施設やサービスの競争を繰り広げます。

 

中国本土と隣接する立地も強力な競争力です。しかし、顧客基盤が特定の地域に集中している点は、同時に限界としても作用します。

 

2025年のマカオ訪問客のうち、中国本土は約2902万人、香港は約730万人、台湾は約100万人でした。これら3地域からの訪問客が全体の約93%を占めました。

 

巨大な背後市場は成長の動力ですが、当該市場の景気や出入国政策、資金移動をめぐる環境変化が都市経済に与える影響も大きくなります。

 

過去に高額顧客を誘致していたジャンケット(仲介業者)中心の営業の縮小は、こうした構造的な敏感さを示しています。この市場が縮小するにつれ、カジノ事業者が直接確保する顧客や大衆顧客の重要性が増しました。

 

ただし、ジャンケットの縮小をVIP市場全体の消滅と理解してはいけません。高額顧客がいなくなったのではなく、顧客を誘致・管理する方式と市場の構成が変わっているという点を併せて見る必要があります。

 

◇ 観光客が多ければ都市もより豊かになるか

 

訪問客数は観光都市の重要な指標ですが、それだけで産業の成績を判断することは困難です。

 

マカオの2025年の訪問客のうち、日帰り客は約2352万人で全体の約59%でした。宿泊客は約1654万人で、全訪問客の平均滞在期間は1.1日でした。日帰り客の多くは近隣の珠海住民の就業訪問であると知られています。

 

日帰り客も食事やショッピングを通じて経済に貢献します。しかし、宿泊の有無や滞在期間、消費場所によって観光効果が広がる範囲は異なります。入国人数が増えたという事実だけで、ホテルや周辺の商圏の売上まで良くなったと断定できない理由はここにあります。

 

逆に訪問客が減っても、一部の高級ホテルや特定の事業者の実績は改善することがあります。だからといって都市全体が好況だと評価してはいけません。

 

観光産業を読み解くには、訪問客数とともに宿泊率、滞在期間、消費規模、事業者の収益性、地域商圏へとつながる効果を調べる必要があります。

 

◇ カジノ売上、同じ基準で比較すべき

 

ラスベガスとマカオを比較する際、最もよくある誤りは、異なる範囲の統計を並べて置くことです。

 

ネバダ州全体とラスベガス・ストリップは同じ地域ではありません。観光客が通常「ラスベガス」と呼ぶ観光圏域も、ラスベガス市の行政区域と正確に一致するわけではありません。都市人口と観光実績を提示する際も、こうした違いを記憶しておく必要があります。

 

売上の概念も区別しなければなりません。

 

カジノの総ゲーム売上であるGGRは、一般的に顧客のベット額から当選金支払額を引いた金額を指します。顧客が賭けた金の総額やカジノの純利益を意味するわけではありません。

 

ここに客室・飲食・ショッピング・公演などの売上を合わせた「リゾート総売上」はまた別の指標です。ゲーム売上が大きい都市と、観光消費が多様な都市の競争力は、それぞれ異なる方式で評価する必要があります。

 

◇ 両都市とも完成形ではない

 

ラスベガスの課題は、多様なコンテンツを顧客が納得できる価格と体験で提供することです。

 

高級施設が増えるほど顧客の期待も高まります。客室料の他にリゾートフィーや駐車料金、飲食費などが加わると、旅行者が感じる負担は大きくなります。施設の高級化が即座に顧客満足や再訪問につながるわけではありません。

 

ただし、2025年の訪問客減少を価格問題だけで説明してはいけません。観光局は経済の不確実性や旅行トレンド、政策環境の変化などを併せて提示しています。

 

マカオの課題は、カジノの競争力を維持しながら、顧客市場と観光需要を多角化することです。

 

2023〜2032年のカジノ運営権契約締結当時、6つの事業者は計1188億パタカの投資を約束しました。このうち海外顧客市場の開拓と非カジノ事業に割り当てられた金額は1087億パタカでした。これは契約当時の投資約定であり、全額執行された実績とは区別しなければなりません。

 

投資規模と同じくらい重要なのは運営成果です。公演場を建てることと、観客を継続的に集めることは別物です。展示場にはイベントが、ホテルには宿泊需要が、ショッピングモールには購入顧客が必要です。

 

非カジノ事業の成功の可否は、建物の大きさよりも実際の利用需要と収益、都市経済への貢献で判断すべきです。

 

◇ 両都市の違い、こう読めば簡単

 

  1. 成長の主要転換点= カジノ合法化と大型リゾート・公演産業の発展 vs 独占体制から競争体制への転換

  2. 観光需要の特徴= カジノ・コンベンション・公演・スポーツなど訪問目的の結合 vs 中国本土・香港・台湾への訪問需要集中

  3. 核心的な強み= 複数の産業を連結する観光都市運営 vs 複合リゾートの集積と巨大な背後市場

  4. 主要な脆弱性= 旅行費の負担と景気・旅行需要の変化 vs 特定市場とカジノ産業への依存

  5. 今後の課題= 価格対満足度と訪問需要の維持 vs 顧客市場の多角化と非カジノ需要の拡大

 

◇ 江原ランドが学ぶべきは「施設の大きさ」よりも「訪問の理由」

 

江原ランドは両都市と出発条件が異なります。廃鉱地域の経済再生という設立目的と公共性を抱えており、交通や背後市場、運営規制も異なります。

 

したがって、ラスベガスの公演場やマカオのホテルをそのまま移し替える方式では、同じ成果を期待することは困難です。まずは江原ランドを訪れる顧客と、今後誘致する顧客にどのような需要があるかを確認しなければなりません。

 

カジノ顧客は利用環境とサービスに満足しているか。同行者はカジノの外で時間を過ごす理由があるか。リゾート訪問が古汗(コハン)・舎北(サブク)をはじめとする周辺地域の食事や宿泊、観光につながっているか。新しい施設は実際の需要と運営能力を根拠に推進されているか。

 

カジノの競争力と利用者保護も併せて設計しなければなりません。顧客の信頼を守り、のめり込みを予防しながら、ゲーム以外のレジャーの選択肢を広げてこそ、持続可能な観光に近づくことができます。

 

ラスベガスはカジノから始まり、訪問理由を広げてきた都市です。マカオは競争と大規模投資で成長した後、産業と顧客基盤の多角化を推進している都市です。

 

両都市の経験が江原ランドに投げかける問いは明確です。カジノを訪れる顧客には、また来る理由があるか。カジノをしない人にも、訪れる理由があるか。

 

複合リゾートの未来は、その二つの問いにどれだけ説得力を持って答えられるかにかかっています。